こんにちは!
福岡の靴作る人「NORI」です。
今回は『Japan cha cha shoe 2022』の制作風景の写真を元に、靴作りの流れを見てみようと思います。靴作りのやり方は人によって様々ですので、一つの参考までとしてください。
そして、私自身もまだまだ自分のやり易いやり方等を模索中です。今回はこのように制作したという一例だということをご了承ください。
また、この記事は写真が多く使用されています。読み込みが遅い場合がありますので、時間があるときに見ることをおすすめします。笑
それでは、よろしくお願いします。
靴作り〜Shoe making〜
では早速、靴作りの解説を始めていきます!
木型
今回はドイツの既成木型を使用したため、木型の修正等を行なっていません。(通常は、足の採寸や採型を行い木型を制作します。)
そのため、この工程で行ったことは、特にありません。が、
足底のサポート(内・外側縦、横アーチアサポートのこと)が既にあるタイプでしたので、アインラーゲン(中敷のこと)の制作を行いましたが、こちらは整形靴技術の一つのため、今回は省略します。(別途記事にまとめる予定です!)
インソール(中底)
今回ダブルソーン製法ということで、インソールの加工が必要になります。非常に重要な工程のため、じっくりみていきましょう!ダブルソーン製法って何??というかたは、こちらをご覧ください。(前回の記事にまとめています。)
まず、木型の底面より少し大きめの牛のショルダー(肩)の革を用意します。
ガラスを使用して、革の銀面層を剥ぎます。この時、ちまちまとやるのではなく、流れるように一気にやるようにすると良いと思います。うまくいくと、削りカスが鰹節のようになるとよく言われます。(写真は微妙ですね。笑)

銀面をはぎ終わると、革に水を含ませます。水をバケツ等に入れて、ザブンっとつけるのも手ですが、インソールの加工をこの後にすることを考えると、必要最低限の水で十分なため、ブラシでさっと水分を含ませます。

釘を打って革を木型に固定します(3〜4点ほど)
余分がありすぎる場合は、カットしていきます。(靴職人さんと言えば、革包丁だろと思うかもしれないのですが、全然カッターを使用します。細かい作業になると革包丁の方が良いのですが、ざっくりのカットなので。)

チューブを先端の方からグルグルと巻いていきます。
こうすることで、水を含んで柔らかくなった革が木型の底面形状を記憶してくれ、乾燥した時には革が木型の底面形状にぴったり沿ってくれます。

乾燥したら、チューブを取ります。
木型のエッジに沿って、革をカットしていきます。(ここでは革包丁の方がやりやすいかなと。ぎりぎりを攻めるので。)

余分をカットし終わると、バリが出てきます。そのバリを面取り包丁で撮っていきます。(革包丁でも良いですが、難しいです。)面取り包丁って何??という方は、こちらをご覧ください。アップの写真を以前の記事に載せてあります。

ここから、すくい縫いをするための溝を掘っていきます。この設定は、現在絶賛模索中なため、ここではスルーさせてください。
設定ができたら、切れ込みを入れ、その切れ込みの深さに合わせて包丁を入れて、下写真のように革を取っていきます。(伝わりますかね?笑)

溝の加工をする前後の写真を見ると少しイメージしやすくなるのかなと思います。

その後、すくい縫い用の下穴をインソールに開けていきます。間隔は、10mm以下で設定しています。(今の所はそんな間隔です。)

下穴を開けると、たまにインスタで靴職人さんがあげているような感じになります。

ここまででようやくインソールの加工が終了です。
型紙
木型にデザインを描き、それを塩ビシートにトレースします。それを紙にうまいこと落とし込みます。
つまり、立体のモノを平面に落とし込むという技術が必要になります。(これが難しい。。。)
靴メーカーさんの中で言うと、「パタンナー」と呼ばれる方々のお仕事ですね。
解説は難しいので、スルーさせていただきますが、パタンナー(専属の仕事をする人)が必要なくらいのことをここではやっているんだと認識してもらえればと思います。
アッパー
私たちがよく目にするアッパー部分の工程に入ります。
白い部分には、去年使用した新喜皮革(@shinki_hikaku_co)さんの馬革を
赤い部分には、ジビエレザー専門店「VARIED(@varied_jibie_leather)」さんの鹿革をアッパーに選択しました。

切り出し
まずは傷の有無や、伸び方向を確認します。

それらに合わせて、型紙を配置して、型入れと呼ばれる作業をします。これは、型紙を置いてその周りを銀ペンでなぞるだけの工程です。この肩入れをせずに、型紙ぴったりでカットするやり方もあります。

肩入れ後、落ち着いて革を切っていきます。カッターの刃を常に垂直にすることが大切です。
カットした断面が斜めだと、見栄えが悪いです。。。

各パーツをアッパーとライニングで切り出せたら、こんな感じになります↓↓↓

革漉き(かわすき)
革が切り出せたら、縫製だ!!
ではありません。パーツの重なり部分は、重なりがない部分と比べて、厚みが増します。厚みが増すと、靴になった時にどうなるの?とイメージすると、、、
そうです!段が生まれますよね!!!
そんなことがないように、重なり部分の革は、革包丁で漉く(手漉き)必要があります。(基本的には、革漉き機と言う道具である程度漉いた後に手漉きをします。)

縫製
革漉きが終わったら、ようやく縫製です。
縫う手順やどう縫えば楽なのか等を考えつつ、パーツを貼り合わせていきます。

縫製作業は、「慣れ」と言う言葉に尽きるようです。どの人に聞いてもそう言われました。笑
私もまだまだ練習が足りていないようですが日々頑張っています。

縫製が終わると吊り込み用の仮紐を通して、アッパーが完成となります!

吊り込み
靴作りの醍醐味です。
そう、吊り込みです。
型紙を作る際に、立体のモノを平面に落とし込みましたが、ここでは立体に戻していきます。
仮吊り込み
まずは前足部(足を前後に分けた時の前部分)を5点の釘で止めていきます。そこから、履き口を合わせるために、後足部(足を前後に分けた時の後部分)をグッと引きます。

センターラインを基準として、デザインが木型に乗っているのか確認して、OKであれば反対も吊り込みます。左右差がないように注意しながら進めていきます。最終的に片足10〜15点ほどの釘で固定するようにしていきます。

本吊り込み
さて、仮があると言うことは本番があります。
本番の吊り込みでは、各種芯材(踵、つま先、サイド)をアッパーとライニングの間に装着して吊り込んでいきます。この時に、仮吊り込みをしておくことで、本吊り込みがやりやすくなります。
また、本吊り込みではカウンターボンドと呼ばれる水溶性のボンドを使用します。このボンドは、硬化時間が決まっており、大体30分前後で固まるため、それまでに吊り込みができていないといけません。
と言うことは、仮吊り込みで本吊り込みをやりやすくしておくことの大切さがわかるかなと思います。

本吊り込みが終わったら、余分なアッパーをカットし、釘を内側に全て倒しておきます。
ここまでくると、ようやく靴らしくなってきます。

すくい縫い・出し縫いの糸準備
縫い糸の準備に取り掛かります。
麻糸(単糸)を3〜5本を撚り合わせ、チャン(松脂)を擦り込みます。擦り込むと言うことは、麻糸にチャンを熱で溶かし入れるイメージです。つまり、早さが肝です。
早さがなければ、チャンは溶けません。。。

均一にチャンが擦り込まれたら、革や布(キャンバス等が良いと思います。)でより均一に伸ばしていきます。また、余分な麻糸がこの時にとれていくので、麻糸は細く強度が高い状態になっていきます。
この時も早さが重要です。
均一になったら、縫い針を付けて、ロウを麻糸に軽くコーティングしてあげます。こうすることで、縫い糸ががスムーズに引くことができます。


これで縫い糸の準備が整いました。
すくい縫い
それではすくい縫いです。
まずは、縫う所の釘を抜き、すくい針をインソール〜ウェルトまで貫通させます。

縫い針を開けた穴に通します。

縫い糸を引きます。

引いた縫い糸を最後まで引き切り、ギューーっと引き締めます。この時に手を痛めやすいため、グローブをはめておくと良いと思います。

ハンマーで縫い目を叩くことで、もう少し縫い糸を引く空間を生み出せます。
空間が生み出せたら、もう一度ギューーーーっと引き締めます。
この繰り返して、一周縫い進めていきます。最後は、内側で固結びをして縫い止めます。

ウェルトの成形(L字)
すくい縫いが終わったら、ウェルトに水を含ませ、L字方向にハンマーで叩いて成形していきます。
またこの時に、余分なアッパーやライニングはカットしておくことが必要です。(この余分なアッパーやライニングは吊り込みで必要だったと言うことで、吊り込み代と呼ばれます。)

ウェルトビーターとハンマーを使用して、ウェルトを真っ直ぐに成形しつつ、革の繊維を詰めます。

完成した靴のコバの出具合をイメージして、ウェルトの余分をカットします。

カットしたら、再度ウェルトを真っ直ぐに成形します。
(なんでウェルトをこんなに何度も真っ直ぐにしないといけないの?!と言う声が聞こえてきそう。。。笑)
なぜかと言うと、すでにここから完成した靴のイメージが必要だからです。完成した靴を横から見たときに、コバがウネウネしていたらカッコ悪いですよね?つまり、かっこいい靴に仕上げるためなのです!!(それを言うと、インソールの加工の時点ですでにイメージできていないといけないという事実。。。笑)

L字成形が完了したものがこちら↓↓↓↓↓


シャンクとフィリング(中もの)
インソールの加工で取っていた革を元に戻します。(もちろん接着剤を塗って、接着します。)

シャンクを接着して固定します。(本来であれば、錆止めでテープを巻きますが、今回展示用のため省略しています。)

板コルクをフィリングとして接着します。隙間にキチンとコルクが入り、凹を埋めるようにすることが大切です。

アウトソールの膨らみがどうなっていてほしいか等をイメージしながら、丁寧に削っていきます。靴になれば見えない部分ですが、美しいソールを生み出すには手の抜けない工程です!

アウトソール(本底)
アウトソールを接着し、ハンマーでしっかり圧着します。この時、端まできちんと接着できているかを確認することが大切です。

余分なアウトソールは、カッターでカットしておきます。

出し針が出てくる所を数カ所確認していきます。

当たり付けが出来たら、一周ラインを引きます。そのラインの少し外側からラインに向かって斜めに切れ込みを入れていきます。

切れ込みが入ったら、出し縫いの糸が入るスペースが必要なため、溝を掘ります。今回はステッチンググルーバーと呼ばれる道具を使用しました。靴教室とかでは、ガリと呼ばれる道具を使用したり、マイナスドライバーを加工したものを使用したりしてました。

ちなみに出し縫いが終わったら、溝伏せをします。溝伏せ前後を見比べると面白いかもしれません。
と言うことでどうぞ↓↓↓

出し縫い
ダブルソーン製法の2回目の縫いである出し縫いです。縫いのため、すくい縫いとやることは大きく違わないです。
出し針をウェルトからアウトソールまで貫通させます。

縫い針を開けた穴に通します。

縫い糸を引きます。その後、引き締めます。(今回はハンマーで叩くことはしません。)
基本的には、この繰り返しです。最後はアウトソール側で固結びをして終わりとなります。

切り込みを入れて起こしていた革に水をつけ、柔らかくなったところで、縫い糸を隠すために溝伏せを行います。
コクリ棒と呼ばれる木の棒で擦ることで綺麗に革を伏せることができます。

空ゴテ(コバ成形)
コバを綺麗にしていきます。
まずはコバの出具合を最終調整でカットします。ここは慎重にカットするべきです。(何度やりすぎてしまったことか。。。笑)

木やすりをかけることでカットした時に消しきれなかった凸凹をフラットにして面を出します。(革包丁で面を出せていると楽です。)

面が出せたら、水を少し含ませガラスをかけます。スーーーっと一気にやれるとGOOD!

紙やすりをかけて仕上げていきます。(粗め⇨細かめ)

バリが出てくるため、面取り包丁でバリ取りをします。

水をコバ全体に少しつけて、落ち着いたところで、コバゴテを押し当てます。
すると、革は引き締まりつつ、コバゴテの形に成形されます。下写真だと、コバゴテ付近のコバが少し色が濃くなり、引き締まっている感じがわかるかと思います。

アウトソール仕上げ
アウトソールの銀面層をガラスで剥ぎます。

ガラスでは取りきれなかった銀面層を紙やすりで剥ぎます。(粗め⇨細かめ)

「ふのり」と呼ばれる海藻を水で煮て溶かします。

煮て溶かせたら、アウトソールに塗布します。

その後、布で擦るとナチュラルな感じで光沢が生まれます。(ヒールが付いているのは気にしないでください。笑)

積み上げ
接着剤を塗布します。

積み上げ材の革を一枚ずつ接着して、その度に不要な部分をカットします。

靴を置いたときにぐらつきがないように、積み上げ材の底面を革包丁でカットしたり木やすりで削って調整します。

最後の革まで接着が終わったら、積み上げの側面に水をつけます。

ほんの少し落ち着いたら、ハンマーのフィン(細い方)で軽く叩きます。こうすることで、積み上げ材の革の繊維が密に詰まり、強度のあるヒールができます。

フィンで叩くと凸凹になってしまうため、木やすりで削って、面を出します。

面が出たら、ガラスをかけます。

紙やすりをかけて仕上げていきます。(粗め⇨細かめ)
うまくできていれば、下写真のような革の繊維が、綺麗に見えます。
この後、イチョウゴテと呼ばれるヒール周り専用のコテで空ゴテをします。(コバの時のヒール版みたいな感じです。)

熱ゴテ(仕上げ)
ヒールやコバにロウを塗りつけた後に、温めたコテを止めずに擦り付けます。そうすることで塗りつけたロウが、均一に伸ばされます。(今回は、焦がすためにわざと止めまくりました。笑)

余分なロウを布で拭き取ります。そうすることで、ツヤが生まれます。

ファッジウィールでギザギザの模様をつけます。ファッジウィールって何??という方は、こちらをご覧ください。アップの写真を以前の記事に載せてあります。

目付けゴテを使用し、よりくっきりギザギザをつけます。(今回はこの時に焦がしを入れました。)

木型抜き
吊り込み用の仮紐を取ります。(アッパーには、くれぐれも当てないように!)

木型抜きを使用して木型を靴から抜きます。

靴磨き
今回写真を撮り忘れてしまいました。笑
以前に靴磨きのやり方をまとめているので、よかったらこちらをご覧ください↓↓↓↓↓↓
アインラーゲン(中敷)
アインラーゲンにトップカバーの革を接着します。
接着剤をアインラーゲンとトップカバーに塗布します。(強力な接着剤である必要はありません。)

つま先の方から空気が入らないように接着します。(なんかスマホの画面シールみたいな解説ですね。笑)
接着できたら、余分な革をハサミでカットします。

アインラーゲンを靴に装着します。

靴紐
鹿革の端の方(アッパーには使用しないであろう部分)を靴紐状にカットします。
日の丸が綺麗に見えるように、靴紐を通して結びます。

完成
完成したら、撮影タイムです!!!笑笑

まとめ
いかがでしたか?
靴作りの本はいくつか出ていますが、私なりに解説してみました。
改めて振り返ると、なかなかの工程数があります。義肢装具会社の仕事をしながらの制作でしたので、約1ヶ月ちょっとの時間がかかりました。
本来、お客様の足に合わせて木型を制作・調整をしていくため、もっと時間がかかります。
以前、かわぐつのケンさんに靴を作らせていただいた時に製作した木型は、とても時間がかかったのを覚えています。(多分、約100時間かかった内の半分以上)その時の動画も見ていただくと、工程が違うところもあって、面白いかもですね!
【靴作ってもらう】整形靴が完成したので届けてくれました!履き心地最高です
【靴作ってもらう】整形靴が完成したので届けてくれました!履き心地最高です
今回の記事はこれで終わりとなります。
革靴が好きな方やスニーカーが好きな方、おしゃれが好きな方等々、いろんな方に見ていただき、楽しんでもらえたらなと思いこの記事を書きました。よければ、感想などInstagramのDMからいただけると嬉しいです。
それではまた。
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